今回は【野田屋流匠の技・蒸し】編を説明させて頂きますので、宜しくお願い致します。
前回の【素焼き編】でご説明したように、“身側は美しい白”で
“皮側は星のような細かい焼き目”の入った綺麗な“素焼き”が出来ましたら、
次は、下地処理で最も熟練を要する“蒸し”作業に入ります。
何故に、「蒸し器」で蒸すだけの“蒸し”作業が、
熟練技を必要とする程重要かと云いますと、正しく“蒸し”作業こそが、
関東流「江戸焼き」の真骨頂と云えるからです。
関西流「地焼き」には無い“蒸し”作業によりまして、
“素焼き”状態から、余計な脂分と雑味を取り除き、
適度な柔らかさと旨みの凝縮した状態にしてこそ、
本焼き工程の“万遍返し”が可能になるからです。
しかし、この“蒸し”作業が中々厄介な工程であるのは、
活鰻によって“蒸し時間”に個体差があるからです。
天然鰻や愛知三河産や九州産、或いは「幻の鰻」の共水まで、
全産地に措いて“蒸し”時間が異なりますし、
同じ産地の活鰻でも個体差が生じる時もあります。
(またの機会に、産地毎の活鰻の特徴について述べたいと思います)
当店の方針では、“蒸し上げ”のタイミングは、
『耳たぶ程の柔らかさ』が最上だと思っております。
何故ならば、それより硬いと皮が口に残りますし、
それより柔らかいと小骨が口に残りますので、
『耳たぶ程の柔らかさ』こそが、当店の真骨頂である“万遍返し”に
最も適しているからですし、このように、全ての素焼きを
『耳たぶ程の柔らかさ』に仕上げる為には、
“蒸し”の状態を何度もチェックする“目利き”が必要となってくるのです。
その為に、当店にご来店頂いたお客様には、当日の活鰻の状態に応じて、
30分〜60分の待ち時間をご了解頂くようにしております。
どうです? うなぎ屋さんの待ち時間の理由がご理解頂けましたでしょうか?
賢明な読者皆様にアドバイス致しますと、行きつけのうなぎ屋さんで、
何故か『蒲焼が手早く提供』されたり、個体差のある素焼きを
『タイマーで蒸し時間を計測』するような仕事を見かけたら
.....???.....かも知れませんネ。
「割き」「串打ち」「素焼き」「蒸し」の工程を、
【野田屋流・匠の技】のように妥協する事無く美しく仕上げてこそ、
写真のような「筏蒲焼」も完成するのです。
*入谷のうなぎ「のだや」ページへ。
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