今回は、活鰻の『割き』について解説させて頂きます。 意外と知られていませんが、『割き』が蒲焼完成時に、 「飴色」に仕上がるか、「焦げ色」になってしまうかに大きく関わっているのです。 何故ならば、切れ味鋭い庖丁で、血糊も付けずに美しく割けた活鰻は、 『素焼き』でも白く仕上がり、蒲焼は『万遍返しの本焼き』によって “黄金色のような飴色”に仕上がりますし、白焼きに仕上げても、 “艶のある乳白色”に仕上がります。 しかし、切れ味鈍い庖丁で、血糊ベッタリに破いた(割くのでは無く)活鰻は、 『素焼き』では黒くなって、蒲焼にすると、焦げの多い状態になり、 白焼きにすると“黒焼き”になってしまいます。 当店ファンの“うなぎ通”の皆様には、もうご理解頂けたと存じますが、 血糊ベッタリに破いた活鰻の身質の表面は凹凸で、 余計な血糊が染み込んでいますので、『本焼き』しても、 強い焦げが付着して決して飴色には仕上がりません。 一方、切れ味鋭い庖丁で、血糊も付けずに美しく割けた活鰻の表面には、 艶のような光沢さえ生まれて、表面もフラットですので、 『本焼き』すると、余計なタレが付着せずに美しい飴色に仕上がるのです。 料理には共通点が多いですが、切れ味鋭い刺身庖丁で切り出したお刺身が、 艶のある光沢を放っているのと似ています。 (色の悪い刺身には、鮮度の他に庖丁使いも関わっているのです) 以上が野田屋流の『割き』の要旨ですが、“言うは易く行うは難し”で、 そもそも活鰻の中骨は三角骨で、しかも生肝(これが焼くと珍味の肝焼きです)が 隠れているので、生肝を避ける庖丁捌きは“繊細且つ精確”を要求されるので、 外科医のメス捌きに匹敵するかも知れませんね。 なので、当店で修業中の若い料理人達は、稀少な天然砥石で、 各自の庖丁を剃刀のように研ぎ上げる訓練と、美しく捌く為の訓練に 日々を費やしております。 ここまで、長々とお付合い下さいましてありがとうございます。 『うなぎ料理人総本家』【割き】編は如何でしたか? うなぎ好きな皆様も、以上のような知識を持って、 色々なうなぎ屋さんに足を運ばれてうな重を召し上がりますと、 新たな発見があると思います。 また、他店では真似の出来ない、写真のような「総本家の技」は 入谷鬼子母神前に在りますので、今後ともご愛顧の程宜しくお願い申し上げます。 *入谷のうなぎ「のだや」ページへ。 |